おぞましい昆虫のこわねみたい





あなたのうつくしさは
奥歯のふちに垂らされた蜜をすり潰したときの
ちょっとした酸っぱさみたいに
わたしの眉根をつねる

あなたはかわいい落ちめだ
わたしのしらない化けものを恐れて怒る
にどねのほねの柔なくぼみに謎謎
編むよるにいらなくなる
夜吸い蜂の砂糖づけ
瞼を縫うしぐさがやさしい
この世に別れを切りだすあなたはやさしかった
つめたいほねで暖をとるわたしはさみしかった
恥ぢらいのあまいのやんなる

かなきりごえであったかいふりしてる
おぞましいこわねの昆虫みたい
たべたことない?

さかなのひれ きれいでしょ
あなたは居ない だからわたしも居ないよ
お化けのまねごとして ひったくった夜るで
あなたはぐつぐつ ほら
おく歯の毒のあとが焦げついて あなたは魘される

あなたのことばは
野生の星くずみたい
みがってに翅をばたつかせるところは
よるのあのひとたちに似ている
価値のないわたしのてあしに似ている

わたしの臓器のなかを蠢いて
ざわざわいわせる寄生虫じみたみえない謎が
恋と見紛う感かくをあなたに残していくはずだった

しらない眼球 すきとおっていられる
それがやっぱりちょっと酸っぱい
あなたがこのうえなく どうしてもきれいなひとだったから

わたしはそれから生え並んだ歯をひとつずつ叩いてみて
どれかひとつがきんきん痛みを叫ぶのを期待していた
ずっとずっとかなしいから
えいえんに泣いていてもいいようにしてほしかった
だからあなたの嫌悪のなかに埋まったひるがえる翅で
たべた

ねえ がらす片がじゃりじゃり
奥歯のひらたいところで
まぶされた砂糖みたいにじゃりじゃりしてる