わたしのオーツミルクの幼虫





ぼやかされて怪しいうねりだわ
星づく夜がみえないのはあなたのせい
かわりに散りばめたざくろで
感かくがぢゅうと酸っぱいのはあなたのせい
泣いてみせないいたづらなあなたのせい




浴槽にばらまじりのあなたは深い / ばら撒かれた泥のひとすぢにあなたの亡霊が映り込んでほしい / めのまわるうららかな了り / あなたのつつましさでよるを懲らしめてあげて / こぼされたみるくみたい / 迷信のめで恐がり / あなたが女くさいと罵ろうとしたのであろうくちびるが青く慄くさまを 浴室から吸い上げるようにみつめていたつややかに裂けてしまいたい / うらなりな虫媒花 / みようみまねで金盞花 / あさぎ燃ゆればやわくもほねふたつ / ややのきらいなのあまいもの


あなたがひかる亡霊をかわいがるみたいに
わたしをぶつのすきよ
あなたのとびきりの暴力性は
ろくでもないこの世のたったひとつのあまいものみたいに
わたしを毒してしらしめる



からめる怪物 / おり過ごした惑星にいろはありません / 野花のたべかた(とんとんしてみて) / あねもねより花冷える / リコリスの甘いなんてうそなんです / そしてにゃあと鳴け / えいえんの呪縛っていいにおいがするらしいわ なんでもとっても甘くって 絹の光沢のようにうつくしいらしいわ / 奥歯につめたぱぷりかのあじがしない / あなたはうれない園芸本 / すいたら縛って


あなたの瞼ってなんだか
銀いろの刺青をいれているような厭な光沢があって
崩れたのどには恐ろしく色づいたことばを引っ掛けてる



いろんなひとがきらい(あなたがちっちゃい宇宙人だったとしても やっぱりきらい) / 泳ぐてあしに花びらが散る / 禍いめいて訊いてみたらいいわ / とうめいの脊骨がぎろぎろ魘されてる / おずおずとピラニア / さかあがり宇宙人 / あなたがうそを呑むときの とびちるぎらぎらしたばらの破片 で頸切った / 春酸っぱさをはじいてあたしの歯を剥き出しにした恋いびとに名まえをつけて / わたしは夜るの香水瓶を噛む / あまい謎の終わりがあまいなんてしらない


“あなたが亡霊をのぞんだからよ”
やがてわたしの青光る乳歯が
肴めいたあなたを嬲ることくらい
想像に容易かったでしょ?


おそろしいくらいうつくしく在れないなら
あのよるの幽霊はきえたよ
かじった潮はうそっぱちだったよ
春がざわざわいうのは
あなたが蛾だったからだよ
わたしの感性が
ひどい悍ましさを吸い込んだ
褪めたおんなの感性だったからだよ
あなたがしねない
ちぢこまる怒号だよ