めまいと無花果のまひるに





めまいと無花果のまひるに

あま酸っぱいあなたを殺してやりたい
はちみつめいたうぶな夏の翳りにみだしてやりたい
もうずっと死んでみてほしい

ブルーを齧りだしたら
どうか蜜蜂の淡いまま

ああ泥濘が
わたしをすきでいてくれる
かわいい歯形をしらんぷりしてくれる
それなのにいびつなゆびを
齧ってくれる
くらげみたいな掻きあつめたゆめごこちを
吐き散らしてくれる
吐き散らしてくれる

あなたにこわされたここち
おかしなしっぽで浮き沈みのよる
うてなでめいていのふたり
花殻の奇とくな恋いびと
まみどりのつめたい幽霊たち

ふゆめいて心中したい
そうしたらわたし
あなたのかわいいあざになる
あなたのほしくずでまぶされたよるになる
あなたの匂わない瞬きになる
あなたの惨い癖になる
あなたのかなしいやさしさになる
あなたの亡くしたひとになる
あなたの噛んだ浅ましさになる
あなたの暴いたきれいごとのあとになる
あなたのだめになった心臓になる
あなたの苦しいところになる

まばらな棘もなくしちゃった

噛みついたらやさしくおわれるよ
あなたがすきで
わたしはもう亡くしていたから
みがわりの昆虫がほしい
海のしずかなところに散りばめられたお別れがほしい

“しゃがみ込む甘さに飴のべたべたが剥がれないの”
“ふりかえらないで、瞼を縫いつづけて”
わたしはにどと
この海岸線からそちらへは踏み込めない

あなたの所為だよ
あなたの所為だよ
あなたの所為だよ