夜深くに花
そこそこうつくしい絵画
まばゆい瞼の膨らみがやぶれる
かれはひとさしゆびでわたしの頬を盗む
わたしはかかとをだめにしながらひらひら踊って
ひとつずつこわしてきた夜るがとおのいてゆく
なまぬるい乳白色につめたくなる
甘ずっぱくて啼けない
あなたで骨抜き
棲み憑いてよ
火星の蜘蛛です
いずれ
とうめいの脊骨になります
惨めにしゃぶられて
ばらゐろの死体があなたかもしれない
わるいものにして
淡くてオーガンジー啜ってる
だからつい心中しちゃう
たぶん
すい星のひび / にせものの春ざかり
はちみつのみずうみ / みつばちのすみか
花が頬づえ
弔いたいのに
睫毛がとろける
から
もうすこし苦しませて
なぞめいてかなしい
淡くて奇妙
春めいた暴力
まぼろしのさかな
うそつきの奇術師へ
泳ぐのばれちゃったの
仄かにあやめて花を踏む
踊れないふたつの眼球に吸いつく
えいえんだったよ
だからもう
いらなくなっちゃったんだね
“蜜はたらふく”