春つ暇





sweedeedee

あなたはエナメルの宇宙人みたく
青びかりの念仏をとなえる

ね、ちらばるしんぢゅうしよ
花ざくろいちぢく蜜る地獄夜る
しゃぶられた骨は痙攣して美しい
春に化け、気味が惡い
あなたは呪いを吐いてゐる
みにくい星は死にかけてゐる
まなぶたにちる花杏幽しの
しろい繭のあはれ
ざくろの蜜で躾けられたの
わたしのオーツミルクの幼虫
春、泥濘にくれまちすを植ゑて
えんま蟋蟀に蜜柑をつつと垂らして
わたしたちほんとうに、あれから、うんと青褪めたね
香ばしくてみじめ
幽霊のあなたは椿骨まじり

かわいくて物騒な感性で
あなたは亡びる
できそこないの肉體が
ひからびたあい嬌としにたがっている

やさしいあなたの骨がおちてきて
わたしも しにたくなっちゃった

あまいの懺悔して
みるくいろに熟れたひたい
つばきの甘みごと
木いちごに春蜂
めまいと無花果のまひるに
散りぢりの美しいぎらぎらでしょ
“蜜はたらふく”
「わたしの愛が夜じゅうよちよち這いまわって
あなたの頸をきゅってしたら」
どっちがさきにしんじゃうんだろう
みぞれが昆虫
たぶんポルターガイスト
あゝ恨みません瓔珞ゆりの仏さま
ねりね芳し惡霊の
花腐り春腐りひとりばら剪つ
金魚と膨らむ女王蜂
ねっとりと“熟れたミルク”
死んでしまえば、あなたが“恋いびとたち”
奇しくもよぢれる
あなたじき幽霊でしょう
星ぼしのぎらりが牡丹の匂い
花の蕚のしたい
みいらのみが蜂に刺されてる
おぞましいこわねの昆虫みたい

滲んだりあまえたりする
とび散ってすきになっちゃった
あなたのしっぽまるで幽霊だいやいやい
わたしうそがてら花やいだいやいやい
泳げないのに唸るからこわれる
かつてよるのあなたは
お砂糖をこぼしたような眼差しをしていた
あまいの冗談
滲んだよちよちがすき
星を砕いたの 呪いをかけたの すきだと撥ねたの
わたしは野良の感性をみちばたに棄てる
しらないポーチュラカ
花の根がざらめ
スパイスのまぶされた骨がらみ
呪いが蝶々結び

しんでるとちゅうで齧られたらいたいよ
りりしくてあまいのこわい
ぴかぴかのあなたのどれいだよ
ちょうちょの眼球
果食してるの?
“うそのきらきらなのに 魔法の粉みたいに海に撒いてきた”
妙な感情のちく積と カップケーキみたいなひび
あなたにお砂糖でなぐられたい
るる蜜と無花果のむれ

うねる畝るうねるちぢれてわたし獨り獣を懐ける

あなたがすきなひとで
わたしはめのおくがからい



春つ暇 / ねね
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